未来へ繋げるために
今回芦沢ゼミナールで行なったロサンゼルス研修(主にJapanese American museumやManzanar national historic site)の中で自分が率直に感じた事や思いを書きたいと思います。
研修前、ゼミナールでは日系アメリカ人の始まりや強制収容に至るまでの歴史を学んできました。そもそも日系アメリカ人について勉強した記憶はほとんどなく、政府が海外に渡る後押しをしていた事や勤勉な日系人労働者の需要が高かった事も初めて知りました。その一方で、粗末な生活や差別があった事も確かであり、なぜ日本人が定住するようになり、今もコミュニティが存在し続けるのか疑問に思いました。
実際にJapanese American museum に足を運び、様々な人の物語や強制収容に至るまでの動きを展示物を通して見てきました。特に印象に残っているのは、自分はアメリカ人であると思う多くの日系2世の想いです。アメリカで生まれアメリカで育った子供達に、日本に対する思いや繋がりはほぼ無いに等しく、アメリカへの忠誠を誓う気持ちが分かった気がします。多くの文書を読んでいく中で1世の日本への複雑な気持ちや、2世のアメリカ市民としての感情を読み取ることができ、当時の厳しさを少しではありますが感じることが出来ました。
Manzanar national historic siteでは当時の方々の暮らしをより具体的に感じる事が出来ました。非常に簡素なバラックから家具を揃え比較的個人の空間を作ったものまで様々ありましたが、全くプライバシーがないシャワールームを実際に見た時には大変驚きました。
自分が生活することを想像したくもないくらい、その空間が衝撃的でした。しかし、当時住んでいた方々はそれでもバスケットコートや庭を作り、娯楽を最大限に楽しんでいたことを考えると、彼らの強さを感じたと同時に今の日系コミュニティの形成に繋がっているのではないかと思いました。
私は、残酷な過去は終わった事として次の未来に進むのが大切であると考えています。しかし、日本人は日本人としてのアイデンティティを考える機会はほとんどなく、日系人の歴史や苦悩について知る人も少ないと思います。新しい日系世代が日系アメリカ人としてのアイデンティティや日本文化を学んでいる現状がある中で、日本に住む日本人も、同じ事を繰り返さず未来に進む為に歴史を正しく学ぶべきであると強く感じました。いままで考えた事も無かった日本人としてのアイデンティティや未来の教育について考えるきっかけもなり、大変実りのある時間を過ごすことが出来ました。
プロフィール
鈴木実柚
東洋大学国際地域学部国際地域学科所属 異文化理解や多文化共生について興味を持ち2018年2月から8月までカナダ、ウィニペグにて留学。