芦沢ゼミでは、毎年2月にロスアンゼルスの日系アメリカ人コミュニティーを訪問するフィールドトリップを実施しております。今年はコロナ禍により、バーチャルツアーを実施しています。その一環で、現地のLittle Tokyo Service Centerの中村さんのお話をうかがいました。
中村良子(Ryoko Nakamura)様
リトル東京サービスセンター
社会福祉部コミュニティー・リレーションズ担当
ロサンゼルスの日英バイリンガル新聞「羅府新報(Rafu Shimpo)」で13年間新聞記者として勤務。多くの日系社会問題を取り扱う中で、社会福祉の重要性に興味を持ち、2015年からリトル東京サービスセンターで低所得の高齢者を対象に社会福祉サービスを提供。
私たちはアメリカのカリフォルニア州にあるLittle Tokyo Service Center(以下LTSC)で活動されている中村様にお話をお伺いしました。
LTSCは、多目的な社会福祉センターの必要性を感じた日系アメリカ人活動家のグループにより、1979年に設立されました。日系アメリカ人の方が主にLTSCを利用されていますが、様々な人種の方々がLTSCを訪れています。LTSCは、通訳翻訳サービス・ケアマネジメント・地域社会での学習会・法律相談(移民、離婚、福祉etc)・血圧測定・エスコートサービス(車社会なのでお年寄りの方への付き添い)などのサービスを提供されています。また、日系アメリカ人の歴史を継承することに加え、人々の手に届く低価格な住宅の建築など、多岐に渡る活動をされています。
お話を聞いていて、特に印象に残ったことが3つあります。まず1つ目は、児童虐待防止/早期介入プログラム/子育て教室についてです。アメリカと日本では、大きく文化や価値観が異なります。子育てに対する考え方も異なり、アメリカは日本よりも子供を守る法律が厳しいです。アメリカでは、幼い子供を1人で買い物に行かせたりすることはありません。また、子供達の前で親が言い合いをすることは子供への精神的な虐待となり逮捕されてしまう場合もあるそうです。違いを知らないとトラブルに繋がることが多々あると思うので、日本とアメリカ双方の文化を理解しているLTSCの存在は大きいと感じました。
2つ目は、クライアントの方へアプローチする姿勢です。LTSCはクライアントの”ために”働くのではなく、クライアントと”一緒に”を心がけています。クライアントが依存しないように、クライアントが自分で責任を持ち、自立できるようにアシストしているそうです。クライアントのことを考え、力になりたいというLTSCの強い思いを感じました。
3つ目は日系アメリカ人の方々の努力のおかげで、アメリカに訪れる日本人(旅行者等)は差別されることなく、今普通に過ごせているというお話です。日本の歴史の授業では、日系アメリカ人の歴史に焦点を当てて学ぶことはないので、このお話はとても印象的で彼らの努力を忘れてはいけないと強く感じました。今回はオンラインでお話をお伺いしましたが、状況が落ち着いた時には実際にLTSCを訪ねてみたいです。
《後藤歳果》
実際にロサンゼルスでお話をお聞きしたかったですが、オンライン上でも普段聞くことのないアメリカの実情やリトルトーキョーのお話を聞くことができ、忘れられない体験になりました。
少子高齢化が進んでいる社会で、繋がりの関係を忘れずに大切にして、日々を過ごしていきたいと思います。
《中村彩乃》
中村さんの”私たちが今安心して楽しくアメリカやハワイに旅行できているのは今までの日系アメリカ人の方たちが築き上げてきてくれたからである”とおっしゃっていて本当にその通りだなと胸を打たれました。また高齢者に対する繋がりがどんどんなくなっていくことに生きる価値を失う気持ちなどを今までは恥ずかしながら考えたことがありませんでした。これから働く、社会に貢献していく上で人の気持ちになり考える姿勢を改めて中村さんのお話しや働く姿勢を見て感じました。
《三島穂乃佳》
日米の子育てに対する相違で、法に違反することになりかねない点や、アメリカでの医療費の高さに衝撃を受けました。アメリカの一人一人の権利が固く尊重されることと日本の国民保険、それぞれの国の利点を、うまく自国に反映する方法を模索することが大切だと感じました。そして、高齢者の孤独感は、少子化が進んでいる私も含め日本が直面する今後の大きな課題であり、LTSCのようなソーシャルワーカーの存在がますます必要不可欠になってくると感じました。
《田村結香》
日本とアメリカの文化や価値観が全く違うからこそ、LTSCさんのようなコミュニティの大切さと偉大さに気がつきました。芦沢先生のゼミに入り、日系アメリカ人の歴史について学ぶまで、日系アメリカ人たちの今までの努力を何も知らなかったので、とても恥ずかしくもなりました。今年は実際にアメリカに行けずオンラインでの学びになりましたが、大変実りのある時間を過ごすことができました。
(中村良子様にオンラインインタビューを行なったときの様子。写真右上:中村良子様、写真左上:Bryan Takeda様)