ロサンゼルスにおけるバーチャル・フィールドスタディー(日系アメリカ人の歴史に学ぶ)その3

芦沢ゼミでは、毎年2月にアメリカ・ロサンゼルスの日系アメリカ人コミュニティを訪問するフィールドトリップを実施している。本年度は新型コロナウイルスの影響により、zoomを使用したバーチャルツアーを実施することとなった。その一環として、2021年3月13日(土)にオンラインにて、NPO法人「KIZUNA」を設立したCraig Ishiiさんに対し、芦沢ゼミの亀田・小泉・富田・原・渡邊でインタビューを行った。KIZUNAを設立された際のエピソードやプライベートなことまで、お話を伺うことに成功した。

ーCraig Ishii(クレッグ イシイ)さんの経歴ー

学生時代、「Japanese American Citizens League」という日系学生団体に所属し、日系アメリカ人コミュニティや日本文化の継承に興味を持つ。
その後、日系アメリカ人市民連盟のロサンゼルス地域のディレクターを務め、2011年4月にはNPO法人「KIZUNA」を設立。ロサンゼルスで日本文化を題材にしたYouth Programを実施。中でも、子供向けのSummer Campのアクティビティは成功を収めた。
2018年4月までの約7年間、KIZUNAのエグゼクティブディレクターを務めた。
その後、2018年10月から2020年2月までカリフォルニアの「Beckman Coulter Diagnostics」にて、マネージャー職を経験。
2021年5月より、カリフォルニアのコンサルティング会社、Enspiraのマーケティングディレクターに就任した。

ーKIZUNAとはー

5,000人以上のメンバーで構成されており、資金は募金によって賄われている。

KIZUNAが展開する各プログラムは、スキル、知識、ネットワークに基づいており、様々な地域で、あらゆる年齢向けのプログラムが用意されている。
日系アメリカ人コミュニティにおける若い世代の相互交流を通じ、地域コミュニティに身を置き、文化を継承することを目的としている。KIZUNAは、こうした働きかけを通じて、自己のアイデンティティの再考を促し、若い世代に良いインパクトを与える活動を続けている。

ーCraigさんの活動の原点である、Japanese American Citizens League(日系学生団体)に参加したきっかけー

日系学生団体に参加するきっかけは、自身と似た興味や関心、そして日系アメリカ人としての経験を持った人たちと過ごすことに興味があったから。アメリカは多様な文化を持つ国だが、自分と似た容姿、カルチャー、境遇である彼らの存在が、日系ユニオン(日系学生団体)に参加するに至った大きな理由だ、と語っておられた。
さらに、カレッジ在学中に和太鼓をやっていた経験を活かし、若者達に太鼓を教える活動も行っている。そのように、日系学生団体で様々なアクティビティを行っている理由は、アメリカの地で日本の文化を継承することや日系アメリカ人のコミュニティを残し続けることを望んでいるからだ、とのこと。

ーJapanese American Citizens League(日系学生団体)での経験が日系アメリカ人連盟にどのように繋がったのかー

日系学生団体では多くの人と出会い、彼らとの対話を通して刺激を受けたことで、自分には何が向いているのか、何をしたいのかを考えるきっかけとなった。さらに、私に卒業後、NPOで働くことを勧めてくれたのも彼らだった、とのこと。日系学生団体での経験や出会いによって、自分が何をしたいのかを探し、発見することができる場となった、と語っておられた。

ーKIZUNAを設立するにあたり、大変だったことー

KIZUNAを設立するにあたり、子供たちに日本文化に対しての興味や関心を見つけてもらうことは大変だった。しかし、自分がその仕事をやりたい明確な理由やモチベーションとなるものを持つようになると、多くの仕事が困難なタスクではなく容易に感じるようになった。というのも、目標に向けて働きたいと常日頃思っているので、それらを持っていれば、大変な仕事も自然と楽しく行うことができるようになった、とのこと。

ーKIZUNAを運営するうえで、やりがいに感じた事ー

CraigさんがKIZUNAの活動にやりがいを見出したのは、子供たちに働きかけることで彼らに自身の人生について考えてもらう機会をつくることができるということ。Craigさん自身が、かつて日系アメリカ人と様々なアクティビティに参加し、人生を変えることができたように、人の人生を変えることができ、そういった形で人の人生に関わることができることがやりがいだ、と語っておられた。Craigさんは幼少期、ほかの日系アメリカ人と一緒にサマーキャンプに参加したり、様々なアクティビティに参加していた。理由は、親に勧められたからで、自分が行きたくて行っていたわけではない、とのこと。ただ、大人になっていくにつれてそれらの経験が自分自身に大きな影響を与えていて、それがとても大切だったことに気づき、同じ経験を他の多くの子供たちにも体験してもらいたいと思うようになった。その想いを胸にこの活動を続けてきた、とのこと。

ーKIZUNAが展開するsummer campやアクティビティでは、どのような日本文化を子供たちに教えているかー

アクティビティを通じて、日本の歴史やスポーツなど多岐にわたる日本文化を子供たちに教えている。子供たち一人ひとり、興味や関心は異なる。したがって、それぞれの子供たちが自信の興味対象を見つけることができるよう、お手伝いすることが軸だ、語っておられた。

ーインタビューを終えてー

《亀田亜実》
NPO法人KIZUNAを設立されたご経験を持つCraigさんから、実際に苦労されたことや反対にやりがいとなっていたものまでお伺いでき、大変有意義な時間となりました。Craigさんは自分の意思ではなく、幼少期に親から勧められたことが理由で日系アメリカ人コミュニティのアクティビティに参加し始めた、とのことでした。このお話から、小さい頃に周りから受ける影響がどれほど大きいものなのか、を改めて考えさせられました。KIZUNAは、子供たちに様々な経験を提供する場であり、他者との交流の場でもあり、彼らの価値観に大きなインパクトを与えていることがわかります。KIZUNAは、日系アメリカ人に日本文化を教えているだけでなく、子供たちの人生をより豊かにするという大きな役割を果たしていると感じました。

《小泉友菜》
KIZUNAでは食文化や伝統文化だけではなく歴史など日本に関するすべてのことを教えているということに驚きました。また、これらの文化を教える場を提供することで子ども達に彼らの将来の選択の幅を広げているとおっしゃっており、とても素晴らしい活動をしていると感じました。オンラインでのインタビューでしたが大変貴重なお話を聞くことができ、多くのことを学ぶことができました。

《富田琴乃》
子供達の関心は様々であることを理解して、それぞれが興味対象を見つけることを目的としている点が素晴らしいと感じました。また、日本の文化を卓上ではなく、アクティビティを通じて発信して、多くの人との関わり合いも大切にするスタイルがアメリカならではで、日本とアメリカの両方にルーツをもつCraigさんにしかできない活動だと思いました。Craigさんの価値観に触れて学ぶことが多い貴重なインタビューになりました。

《原義英》
私はそもそも日系アメリカ人の団体があることすら知らなかった、そんな私にとって今回のミーティングは“KIZUNA”という団体について、また、Craigさんがその団体を立ち上げるのに苦労したことなどを詳しく聞くことが出来る貴重な経験となった。是非ともコロナが落ち着いたら日系アメリカ人について知るためにアメリカ行こうと考える。

《渡邊誠昭》
Craigさんはどんな質問にも快く答えて下さり、とても良い人だなと思いました。私は自分のハーフの見た目について質問したのですが、「それがあなたらしさだよ」と言われ、より自分のアイデンティティーについて考えるようになりました。次は直接お会いして、もっとお話ししたいです。